重力波初検出から10周年を迎えて
2015年9月14日、米国の2台のLIGO検出器が、史上初めて重力波(GW150914)を直接検出しました。この重力波は、連星ブラックホールの合体によって生じたものであり、天文学における新たな観測手法の幕開けとなりました。
その後、2017年には連星中性子星の合体による重力波GW170817が検出され、ガンマ線バーストとの同時観測や、電磁波による追観測が成功しました。これにより、重力波と電磁波を組み合わせた「マルチメッセンジャー天文学」が本格的に始動しました。
2024年1月までに、主に連星ブラックホールの合体による重力波イベントが200件以上検出され、重力波天文学は急速に発展を遂げています。それらのイベントは2025年8月に発表されたGWTC-4.0カタログにまとめられています [1]。
LIGO-Virgo-KAGRAコラボレーションは、重力波初検出から10周年に合わせて、2025年1月14日に観測された重力波イベントGW250114を発表しました [2]。この重力波信号は、GW150914とほぼ同じ質量・スピン・距離で発生した連星ブラックホールの合体によるものでありながら、GW150914の約3〜4倍の強度で検出されました。これは、現在の検出器の感度が2015年当時と比べて大幅に向上していることを示しています。
さらに、この明瞭な信号により、ホーキング博士が提唱した「ブラックホール面積定理」がこれまでにない精度で観測的に確認される成果も得られました。
重力波初検出10周年にあたり、KAGRAの研究代表者である梶田隆章・東京大学卓越教授は次のようにコメントしています。
「重力波初観測から10年となり、今重力波天文学が大きく発展する時期にきました。後発のKAGRAも皆様からの暖かい励ましをいただき、大分感度も良くなり重力波観測までもう一歩です。重力波の第5期国際観測時にはKAGRAとして重力波天文学に大きな貢献ができると期待しています。引き続きご支援をお願いいたします。」
LIGO-Virgo-KAGRAによる第4期観測運転は、2025年11月18日まで継続される予定です。2026年には、2024年以降に検出された重力波イベントの詳細な発表も予定されています。
今後も重力波天文学のさらなる発展にご期待ください。
[1] 重力波のサイエンス「GWTC-4.0カタログ論文」ページ(Link)
[2] 重力波のサイエンス「GW250114」ページ(Link)
