LIGO-Virgo-KAGRA O4観測運転での重力波観測数が200個を超えました

 KAGRAが米国LIGO、欧州Virgoと共同で国際重力波観測ネットワークLVKとして進める第4期観測運転(O4)にて、2025年3月19日、200個目の重力波信号を観測しました。O4は、2023年5月に開始され、途中で観測機器のメンテナンスのために数ヶ月ほど休止する期間もありましたが、24時間体制で進められて来ました。KAGRAに所属するアジア圏の研究者は、インドやオーストラリアのLIGOグループの研究者と共同で、毎日8時間重力波信号のモニタリングを行っています。このような体制で、数日に1回程度の頻度で観測される重力波の情報は、NASA GCN (https://gcn.nasa.gov)とマルチメッセンジャー天文学をサポートする情報基盤(SCiMMA, https://scimma.org)を通じて世界中の天文学者に直ちに報告されています。

 観測シフト体制を運営している3名からのメッセージです。

フランチェスコ・ディ・レンゾ(フランス・リヨン第2物理学研究所 博士研究員、Virgoグループ)
「この取り組みは、天文学コミュニティ全体にとっての科学的な意義を超えて、国際的な協力を促進する強力な触媒ともなりました。地理的に離れていたり、異なる研究分野に属するメンバー同士の相乗効果を育む原動力となっています。」

河邉径太(カリフォルニア工科大学 シニア・サイエンティスト、 LIGO ハンフォード観測所)
「重力波の検出は(初検出から9年半を経て)もはや特別な出来事ではなく、私たちの日常生活の一部になっています。O4だけでも、これまでの82週間で、LIGO-Virgo-KAGRA に所属する数百人からなるチームによって、合計200個の重力波信号の観測情報が速報として天文学コミュニティに向けて発信されました。」

澤田崇広(東京大学宇宙線研究所 准教授、KAGRAグループ)
「O4 での重力波信号の観測数が200個に到達したことは、非常に感慨深いです。この成果は、LVK に係わるすべての共同研究者の献身と、計り知れない貢献の賜物です。共同研究チームのメンバー全員に心から感謝します。しかし、この節目は終着点ではなく、新たな挑戦の始まりに過ぎません。私たちは、さらに多くの画期的な発見が待っていると確信しており、仲間たちとともにこの素晴らしい挑戦を続けていきます。」

 

 200個目の重力波信号は、連星ブラックホールの合体によるものであると考えられています。LVKが実施した前回までの3回の観測(O1、O2、O3)では、 2015 年 9 月から 2020 年 3 月までの23か月間に渡って行われ、90個の重力波信号が検出されました(これらは重力波カタログとして、重力波オープンサイエンスセンター(GWOSC、https://gwosc.org/)でご覧いただけます)。現在のO4観測も23か月間に渡っていますが、検出個数が前回までの合計検出数の倍以上の200個になりました。これは検出器の感度が向上してより遠くで発生する重力波信号も検出出来るようになったためです。また、検出された重力波信号の数が増えることで、より多くの事象に対する解析が行われ、連星ブラックホールの性質や分布などについての詳細な情報が得られると期待されます。

 まもなくLVKは、O4前半に検出された重力波信号について詳細な解析結果を発表する予定です。今後、ブラックホールや中性子星の天体物理学、重力の性質、そして宇宙や銀河の進化に関する新しい情報が次々と明らかになるでしょう。今後のニュースにご注目ください。

なお、KAGRA検出器については、本サイトにて既報のとおり、2023年5月25日から約1ヶ月間、LIGOと共にO4観測運転を行ったあと、運転を中断して感度向上作業を行っています。2024年1月1日の能登半島地震により被災しましたが、同年秋頃までには機器類の復旧を完了して感度向上作業を再開し、O4への再参加及びKAGRA検出器での重力波初検出に向けて準備を進めています。