2015年10月27日

大型低温重力波望遠鏡(KAGRA)の運転開始迫る!

人類初の「重力波」の観測を目指した、大型低温重力波望遠鏡KAGRAの観測開始がいよいよ迫ってきました!

KAGRAは、現在、岐阜県飛騨市神岡町にある旧神岡鉱山のある池ノ山の山麓に建設されている新しい時代の望遠鏡です。望遠鏡と言ったら、スバル望遠鏡や、ハッブル宇宙望遠鏡、多くの電波望遠鏡のように、山頂や宇宙空間のように、空気の影響を可能な限り避ける場所を選んで、宇宙から届く光や電波を受ける望遠鏡をご想像されると思います。でも、重力波望遠鏡は、「地下から宇宙を観測する望遠鏡」です。そんな、常識破りの望遠鏡でとらえようとしている「重力波」とはなんでしょうか?

重力波をとらえる意義

重力波は、かの有名なアルバートアインシュタイン博士が考え出した一般相対性理論を解くことによって、その存在が予言されている重力の波動現象です。その存在は、1979年に、ハルス博士とテイラー博士によって間接的には証明されました。しかし、まるで携帯電話で電波を受信するような感じで、その重力波が装置を使って直接的に検出されたことはいまだかつてありません。

人類は、誕生して以来、まずは光でこの世の中を理解し、特に、この200年の間には、光の仲間である、電波、赤外線、紫外線、X線、ガンマ線の存在を知ることにより、さらに、自然への理解を深め、応用することで、生活を豊かにしてきました。今、これに重力波が加わろうとしています。しかも、重力波は、光の仲間ではないので、光の仲間では見えない世界が見えるのではないかという期待がかけられています。宇宙誕生の瞬間、ブラックホールが誕生する瞬間もみえるようになるでしょう。

重力波はどうやってとらえる?

重力波が来ると、二つの離れた物体の距離が、重力波の周期で伸びたり縮んだりするようになります。重力波望遠鏡は、この伸縮をとらえる、いわば長さ計測装置です。しかし、その重力波による伸縮の効果は非常に小さく、たとえば、地球と太陽の距離(1億5千万キロメートル)が水素原子1個分(0.1 ナノメートル)動く程度でしかありません。それを地球上で行おうとすると、約3kmの長さの直線距離に対し、1兆分の1のさらに1億分の1メートルの変化をとらえる必要があります。しかし、世界の重力波望遠鏡は、KAGRAも含め、すでに、この3 ~ 10倍の大きさのものを検出できる能力をもつ技術を開発しており、その目標検出能力の達成をめざし、現在各国で望遠鏡を建設中です。

KAGRA重力波望遠鏡の目標検出感度を達成するための協力体制

重力波の信号が非常に小さいため、望遠鏡を揺り動かすありとあらゆる原因が雑音となりえます。特に大きく揺り動かすものが、地面の振動と、装置の熱振動です。KAGRAでは、その影響を十分に取り除くための戦略や技術開発を、東京大学宇宙線研究所が主導しながら、高エネルギー加速器研究機構や自然科学研究機構・国立天文台も主要な推進機関として行っています。

例えば、東大宇宙線研究所は、地面の振動を影響を避けるために、そもそも、その地面の振動が小さい場所をKAGRAの建設場所として選定しました。それが、旧神岡鉱山内の地下200メートル以深に新たに掘削した地下トンネル空間です。地面振動は、地表に比べて1/100以下と小さくなっており、特に1Hz以下の振動が小さいことが、重力波望遠鏡の安定的な運用に欠かすことのできない利点となっています。ちなみに、トンネルの総掘削量は、外部からのアクセス部、干渉計が設置されるアーム部を合計し、7700メートル余に達しましたが、1年10か月という短期間で完成されました。

ただ、このように地下に設置するだけでは、とらえたいと思っている重力波の周波数付近に地面振動の影響が多大に残っていますので、鏡をその振動からさらに防ぐ高性能な装置が必要になります。この鏡防振装置を主に開発しているのが国立天文台です。
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さらに、望遠鏡の心臓部である鏡が熱を持っていることが原因で起こる熱振動も重力波信号をかき消す原因になります。この熱振動を低減するための装置を開発してきたのが、高エネルギー加速器研究機構です。****

このように、重力波望遠鏡の感度性能を直接左右する部分の開発には、主要三機関が主導的にたずさわっていますが、その他にも、重力波望遠鏡を望遠鏡として運用するには、真空装置、レーザー装置、補助光学装置、望遠鏡制御装置、データ取得装置、データ解析手法など様々な部位の開発が必要で、それらは、国内外の多くの大学や研究機関の協力を得て推進されています。

重力波天文学の創生に向けて

重力波の初検出を目指して、世界の主要国がしのぎを削っています。アメリカは、腕の長さが4kmあるLIGO(ライゴ)という重力波望遠鏡を2台建設し、目標感度まであと3倍程度まで肉薄しています。ヨーロッパでは、主に、イタリア、フランス、オランダなどが協力し合いVIRGO(ヴァーゴ)という重力波望遠鏡を建設し、さらなる高性能化を進めています。ただ、重力波信号の検出を確信をもって世に宣言するには、1台だけでは心もとないので、KAGRAを含めた複数台の重力波望遠鏡のデータを持ち寄り、信号の信頼性を高めることは必須です。将来は、これらの重力波望遠鏡が観測ネットワークを構成し、重力波天文学を創生することを目指しています。

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2015年10月27日

東京大学宇宙線研究所、高エネルギー加速器研究機構並びに自然科学研究機構国立天文台では、3機関を共同ホスト機関とした協力体制のもと、国内外のさまざまな研究機関・大学の研究者と共同で、大型低温重力波望遠鏡・KAGRA(かぐら)の建設を進めてまいりました。

2014年3月には、そのKAGRAを格納する3キロメートルの腕を2本持つL字形トンネルの掘削が完了いたしました(注)。その後レーザー光源や真空ダクト、真空容器(クライオスタット)といった装置の開発と設置を進め、このたび重力波の観測に必要な第一期実験施設がほぼ完成しました。今回の第一期実験施設の完成を経て、2015年度中に重力波の試験観測を行い、第二期実験施設の完成に達する2017年度には重力波の本格観測開始により、世界初の重力波直接観測、重力波天文学の創出を目指しています。

このたび、この大型低温重力波望遠鏡KAGRAの第一期実験施設が完成したことを報道関係者の皆様にご報告し、その実験施設を見学していただく会を開催することになりました。プレスの方のみですが、ふるってご参加ください。プレス関係の方々には、各機関広報室よりご案内を入れさせていただいておりますので、日時等の詳細は、そちらをご参照ください。

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2015年10月21日

道村唯太さん が「光リング共振器を用いたローレンツ不変性の検証」の研究で、第10回 日本物理学会 若手奨励賞 (宇宙線・宇宙物理領域) を受賞されました。

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2015年10月6日

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2015年10月2日

多摩六都館で、「アインシュタインの宿題に挑む~重力波の検出への期待~」のレクチャーが開催されます。
奮ってご参加ください。登録ページはここです。

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2015年8月3日

医師のためのLife Style Magagine 「Precio」Vol.52で重力波とKAGRAの研究紹介を三代木が行いました。

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2015年8月3日

4月から開講している放送大学の「宇宙と進化(’15)」の講座の第三回「電磁波以外の手段による宇宙の観測」の回で、重力波とKAGRAが紹介されました。三代木が解説を行いました。

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2015年8月3日

8月19日20日に、柏キャンパスにおいて千葉県主催の夢チャレンジ体験スクール「キャリア教育科学・先端技術体験キャンプで苔山さんが講師となり、重力波研究の体験をしていただきます。

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2015年8月3日

11月14日に、猪谷関所館での「歴史と文化講演会」の中でKAGRAの紹介をします。ふるってご参加ください。講師は三代木を予定しています。詳細はHPに掲載予定です。

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2015年8月3日

一般相対性理論誕生100年記念市民講演会が各地で開催されます。ふるってご参加ください。
関連サイト

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2015年8月1日

毎日新聞社の7月30日朝刊に、東京大学大学院理学系研究科・安東さんが解説するKAGRAが紹介されました。

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2015年7月9日

東京大学基金第9回総長主催パーティーにおいて、三代木がKAGRA計画の紹介を行い、多くの東京大学への寄付者の皆様に、KAGRA計画について関心を抱いていただきました。

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2015年7月3日

黒田先生の万有引力に関する記事が、雑誌「パリティ」7月号に掲載されました。

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2015年6月24日

最先端物理学研究がおこなわれている飛騨市「KAMIOKA」で「飛騨サイエンスカフェ」と「大型低温重力波望遠鏡KAGRA見学会」を開催します。

KAGRAの見学会では、もうすぐ試験観測を始める実験装置が間近でご覧いただけます。ご応募をお待ちしています。

★ ★ 飛騨サイエンスカフェ募集要項 ★ ★
開催日 7月31日(金)
時間 19時~(18:30開場)(2時間程度を予定)
場所 神岡町公民館3階大会議室(岐阜県飛騨市神岡町東町378番地)
参加費 無料
講師
 尾関章(科学ジャーナリスト、北海道大学客員教授)
 大橋正健(東京大学宇宙線研究所重力波推進室長、教授)
 宮川治(東京大学宇宙線研究所重力波推進室、助教)
 苔山圭以子(東京大学宇宙線研究所重力波推進室、特任助教)
定員 50名
対象者 中学生以上であれば、どなたでもご参加いただけます。
応募方法
 参加申込書に必要事項を明記の上、飛騨市役所企画課へ「郵送」「窓口提出」「FAX」または、各振興事務所へ「窓口提出」ください。メールでの申し込みも可能ですが、参加申込書の記載項目をすべて記載の上、kikaku◎city.hida.gifu.jp(◎を@に変換ください) へ送信してください。(フリーメール(yahoo、gmail、hotmail等)からの申込みは、市のセキュリティ対策により、受信できませんのでご了承ください。)
 ※応募者多数の場合は抽選とし、抽選結果を後日郵送(7/22頃発送予定)します。
応募締切 平成27年7月16日(木)17時必着
持ち物 筆記用具、飲み物(各自ご持参ください)

★ ★ KAGRA見学会の募集要項 ★ ★
開催日 8月1日(土)
集合時間
 第1便  8:00(終了予定は10:40)
 第2便  9:10(終了予定は11:50)
 第3便 12:40(終了予定は15:20)
 第4便 13:50(終了予定は16:30)
 ※ご希望の便を第2希望までご記入いただけます。
集合場所 神岡振興事務所駐車場(岐阜県飛騨市神岡町東町378)
(※集合場所から見学会場までバスで送迎します)
定員 400名(各便100名)
参加費 無料
対象者 小学生以上。但し小学生は保護者同伴でご参加下さい。幼児はご参加いただけません。
応募方法 参加申込書に必要事項を明記の上、飛騨市役所企画課へ「郵送」「窓口提出」「FAX」または、各振興事務所へ「窓口提出」ください。メールでの申し込みも可能ですが申込書の項目をすべて記載の上、kikaku◎city.hida.gifu.jp (◎を@に変換ください)へ送信してください。
(メールの場合はタイトルに「KAGRA見学会」と記入し送信して下さい)
(フリーメール(yahoo、gmail、hotmail等)からの申込みは、市のセキュリティ対策により、受信できませんのでご了承ください。)
 ※応募者多数の場合は抽選とし、抽選結果を後日郵送(7/22頃発送予定)します。
 ※主催者負担で傷害保険に加入いたします。
応募締切 平成27年7月16日(木)17時必着
留意事項
 ※KAGRA坑内は平均気温が14度程度になります。
 安全のためにも、長袖(羽織れるもの等)、長ズボンでご参加ください。
 ※懐中電灯をご持参ください。
 ※見学会ではKAGRA坑内を徒歩で進みます。入口から出口までの徒歩移動距離は1.5km程度になります。
 ※KAGRA坑内は滑りやすい箇所もあります。歩きやすいシューズ等でご参加ください。
 ※建設中の研究施設のため、危険を伴う場所であることを十分認識していただくとともに、必ずスタッフの指示に従ってください。

募集要項や申込書はこちらをご覧ください。

●主催 東京大学宇宙線研究所 ・ 宇宙まるごと創生塾飛騨アカデミー ・ 飛騨市

【お問い合わせ先】
飛騨市役所 企画課
〒509-4292 岐阜県飛騨市古川町本町2番22号
電話 0577-73-6558
ファックス 0577-73-0071
e-mail : kikaku◎city.hida.gifu.jp(◎を@に変換ください)

Link:
飛騨サイエンスカフェ・KAGRA見学会参加者募集!

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2015年6月19日

小野君が、国際会議GWPAW2015でのポスター発表でポスター賞第一位に選ばれました!

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2015年5月26日

入射光学系、モードクリーナー、ビームスプリッター部、両エンドクライオスタット用のクリーンブースの設置が完了しました。これから、順次運転していく予定です。

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2015年5月26日

両腕3kmの真空ダクトの設置と締結が完了し、真空漏れの無いことも確認されました。

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2015年5月26日

鏡冷却用クライオスタット4台の設置が完了しました。現在、真空の漏れが無いかの検査を行っています。

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2015年5月26日

国立天文台チームが開発していました、KAGRA用の鏡防振装置の一つの動作確認が確認できました。

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2015年4月18日

4月18日にアミュゼ柏で開催された「第12 回 東京大学宇宙線研究所・カブリ数物連携宇宙研究機構 合同一般講演会」で三代木が重力波の解説を行いました。

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2015年4月8日

KAGRAの共同研究者:宗宮君が文部科学省の若手科学者賞を受賞しました。

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2015年1月31日

ヨーロッパの重力波物理研究プログラムであるELITES会議がヨーロッパからの研究者多数、KAGRAの研究者多数が参加し、そして、SSHの高校生も招かれ、ユーロハウスで、2月9日~10日に開催されます。

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