神岡町北部会館の全館を改修し、KAGRAの研究スペースを拡張

2018年3月2日

大型低温重力波望遠鏡「KAGRA」の本格運転を控え、東京大学宇宙線研究所は研究スペースを拡張するため、岐阜県飛騨市神岡町茂住地区の神岡町北部会館を改修しました。3月2日、重力波観測研究施設は多大な協力をいただいた茂住地区の皆様への内覧会を開催しました。

神岡町北部会館は1984年に閉校した神岡町立茂住小学校の跡地に茂住地域の公民館施設、保育園として建設されました。2012年、北部会館1階の一部を改修して大型低温重力波望遠鏡KAGRAの建設の拠点としました。その後2014年には常駐する研究者の増加にともない、北部会館のすぐ隣にデータ収集解析棟を建設しましたが、2018年以降のKAGRAの本格運転にあたり、さらに研究スペースが必要となっていました。今回、重力波観測研究施設は、地域の方々の集会などで使われていた2階部分を含めた北部会館全体の使用許可をいただき、研究室と会議室として改修しました。

地域の皆様、飛騨市の関係者など約50名が参加した内覧会では、梶田宇宙線研究所長のあいさつ(全文はこちら)に続き、都竹飛騨市長により地域の皆様への感謝と研究推進への期待の言葉が述べられ、大橋重力波観測研究施設長による工事とKAGRA研究の現況の説明が行われました。内覧会の後半は今回改修した部屋で改修箇所や以前のまま残した箇所などの説明が行われ、地域の皆様の北部会館での思い出話なども交わされました。

なお、今回の改修工事は東京大学基金の大型低温重力波望遠鏡(KAGRA)プロジェクトへの寄付に基づいて行われました。


改修が完了した神岡町北部会館(奥側)と、データ収集解析棟(手前)


挨拶を述べる梶田宇宙線研究所長


都竹飛騨市長によるご挨拶


⼤橋重⼒波観測研究施設⻑による⼯事とKAGRA研究の現況説明


地域の皆様と談笑する梶⽥所⻑


都⽵市⻑、梶⽥所⻑、⼤橋施設⻑を囲んで記念写真

梶⽥隆章宇宙線研究所⻑による始めの挨拶全⽂

本日は,北部会館改修工事完成内覧会にご参加いただきましてありがとうございます。

ただいま紹介いただきました,東京大学宇宙線研究所所長の梶田です。

皆さまご存知かと思いますが,この北部会館は昭和59年に閉校した茂住小学校の跡地に,地域の公民館施設,保育園として建設された施設です。

私共がこの施設を飛騨市様から初めてお借りして使用させていただいたのは,今から6年前の平成24年のことになります。現在池之山の地下に建設中の大型低温重力波望遠鏡KAGRAの建設を始めるにあたり東茂住地内での拠点となる施設を探していたところ北部会館を使用させていただけるというお話しがあり,1階部分を改修して使用させていただいたのが始まりです。

その後,KAGRAの建設が進むにつれて神岡に常駐して研究する研究者や学生等も次第に増えていったため,平成26年には北部会館の直ぐ隣にデータ収集解析棟を建てさせていただき,平成28年にはKAGRAの初期運転を行うことができました。その後現在はこの春の低温鏡を入れての運転を目指して日々地下や地上にて作業を進めていますが,神岡に来る研究者や学生がこれまで以上に増えているため,これらの建物だけでは手狭になってしまい大変困っておりました。

このような中で,昨年飛騨市様と連携協力に関する協定を締結することができました。これは,飛騨市様と東京大学宇宙線研究所が連携協力を進めることで,学術研究,人材の育成及び地域社会の発展に寄与することを目的としたものです。その中には,研究環境の整備に関する事項も含まれております。

そこで都竹飛騨市長様へ北部会館の2階部分を含めて全体を使用させていただけないかとご相談させていただいたところ,北部会館の機能を夢館に移動する改修を飛騨市様に実施していただくなど飛騨市様の多大なご協力並びに北部会館の利用について地域の皆さまのご理解をいただき,今日の北部会館改修工事の完成に至ることができました。

これはひとえに飛騨市様,地域の皆さまのご理解とご協力があってのものであると深く感謝いたします。なお、今回の改修工事は東京大学基金の大型低温重力波望遠鏡(KAGRA)プロジェクトへの皆さまからのご寄付に基づいて行いましたことを申し添えます。

この北部会館ではこれからのKAGRAを担う大勢の若い研究者や学生が日々研鑽する場所として使用させていただきます。

これからKAGRAでは平成31年中の本格観測を目指して教職員や学生みんなで精一杯事業を進めてまいります。ここ神岡の地から皆さまに新しい発見や嬉しい報告が出来るように努めてまいりますので,引き続きご支援ご協力を賜りますよう今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

平成30年3月2日
東京大学宇宙線研究所長 梶田隆章