これまでで最大の連星ブラックホール合体「GW231123」を観測!

2025年7月14日、LIGO-Virgo-KAGRA(LVK)コラボレーションは、これまで重力波で観測された中で最も質量が大きい連星ブラックホールの合体GW231123を観測したと発表しました。この重力波は、米国のLIGOハンフォードとLIGOリビングストンの2台の重力波検出器によって捉えられました。

GW231123の特徴

  • 観測史上最大のブラックホール: 合体した2つのブラックホールは、それぞれ太陽の約100倍と140倍もの質量を持ち、その合体によって誕生した最終的なブラックホールは、太陽の225倍の質量を持つと推定されています。これらの質量は、これまで重力波で観測されたものとしては最大です。
  • 質量ギャップへの挑戦: 注目すべきは、合体前のブラックホールがどちらも、太陽の60倍から130倍という「質量ギャップ」と呼ばれる質量帯に存在した可能性が高い点です。これは、通常の恒星進化では形成されにくいとされる領域であり、ブラックホール形成の新たな可能性を示唆しています。
  • 高速スピン: さらに、合体前のブラックホールが、それぞれブラックホールとして許される最大スピンの80%から90%という非常に大きな自転(スピン)を持っていたことも明らかになりました。

ブラックホール形成の謎に迫る

このような大質量で高速回転するブラックホールが形成されるシナリオとして、より小さな質量を持つブラックホールが合体することで、形成されたという「階層的合体」が考えられます。このシナリオであれば、今回の観測で得られたブラックホールの巨大な質量と高速スピンが自然に説明できます。

ただし、このような階層的合体の場合、連星の軌道が完全な円ではなくなったり、ブラックホールの自転軸が揺れ動く「歳差運動」が起こる可能性があります。残念ながら、今回の重力波信号の継続時間が非常に短時間であったため、これらの効果を捉えるまでには至っていません。

GW231123の観測は、私たちの宇宙に対する理解を大きく深める画期的な一歩です。今後も重力波天文学の進展により、宇宙の謎がさらに解き明かされることが期待されます。

より詳細は下記のLVKコラボレーションによる解説などをご覧下さい。

サイエンス解説

日本語: https://ligo.org/wp-content/uploads/2025/07/GW231123_Japanese.pdf

英語: https://ligo.org/wp-content/uploads/2025/07/GW231123.pdf

その他の言語:  https://ligo.org/science-summaries/

LIGOによる発表ページ: https://ligo.org/ligo-virgo-kagra-detect-most-massive-black-hole-merger-to-date/

https://ligo.org/detections/gw231123/

論文(arXiv): https://arxiv.org/abs/2507.08219

LVKコラボレーションによるプレスリリース(英文) https://ligo.org/wp-content/uploads/2025/07/Press-release-for-GW231123-discovery-paper-final.pdf