KAGRAの概要

大型低温重力波望遠鏡KAGRAの俯瞰図

 日本の大型低温重力波望遠鏡(KAGRA)は、岐阜県飛騨市神岡町にある神岡鉱山の地下約200メートルのトンネル内に設置されています。片側3キロメートルの長さの腕を持つL字型の重力波検出装置です。2012年に建設が始まり、2020年2月に国際共同観測網の一員として観測を開始しました。
 重力波はアインシュタインが一般相対性理論で予言した「時空のさざ波」です。質量をもった物体が運動する時に生じ、光速で周囲に伝わります。重力波がやってくると時空が伸び縮みしますが、その効果はとても小さいため、検出するには余計なノイズ(雑音)を減らすためのさまざま工夫が必要となります。
 KAGRAは地下に設置することで地面の振動による雑音を減らしています。また、検出器の心臓部にあたる鏡を極低温まで冷やすことで熱による雑音も減らします。
 重力波の直接観測は大変難しいと考えられてきましたが、2015年9月14日、米国の2カ所に設置されている観測装置LIGOが、史上初めて連星ブラックホールの合体による重力波を検出しました。その後、イタリアに設置されているVirgoもLIGOとともに重力波を観測しました。これまでに、「連星ブラックホールの合体」「中性子星とブラックホールの合体」「連星中性子星の合体」による重力波が観測されています。
 重力波天文学は、これまで天体観測に使われてきた可視光や電波、赤外線、エックス線、ニュートリノなどでは見ることのできない未知の宇宙の姿を明らかにすることができます。ただ、米国とイタリアの装置だけでは、重力波がどこからやってきたのか、その位置を正確に突き止めることができません。KAGRAが観測に加わることによって重力波源の位置を決める精度が高まります。その結果、重力波だけでなく、他の手段でも一斉に同じ重力波源を観測することができ、得られる情報が飛躍的に高まると期待されています。