KAGRA命名

 2010年度にプロジェクトとして採択され建設が始まった「大型低温重力波望遠鏡(LCGT)」は、2012年1月28日に「KAGRA」と命名されました。
 作家の小川洋子さんが毎日新聞夕刊のコラムに「早く相応しい名前をつけてあげてほしい」と書いたことをきっかけに、小川さんを委員長とする命名委員会が設置され、全国から寄せられた666件(名称数358)の応募の中から選ばれました。KAは神岡のKA、GRAはGravityやGravitational wave といった重力をイメージする言葉です。

 小川洋子さんはKAGRAについて次のようなメッセージを寄せています。

 広く一般の方々が応募して下さった、大型低温重力波望遠鏡の名称について、最終的な決定をするための委員会が予定されていたのは、2011年、3月12日でした。名前が決まる、つまり望遠鏡に魂が吹き込まれる、まさに最初のその日は、東日本大震災により延期されました。宇宙に響き渡る波に耳を澄ませようとするこのプロジェクトは、もしかしたら人間以外の何ものかに近づく試みなのかもしれないと、厳かなまでの畏れを感じたのでした。結局、KAGRAという、神に捧げる歌舞に通じる名前が授けられたのも、重力波望遠鏡が持っている運命と無関係ではないのでしょう。 宇宙科学に関しては全く素人の私ですが、とある偶然から命名委員長を務めさせていただき、以来、母親のような気持ちでKAGRAの成長を見守っています。人類の進歩のため、KAGRAが自ら背負う使命を、どうか無事に果たしてくれますように。いつも、そう祈っています。

東京大学基金より引用

小川洋子(おがわ・ようこ)さん 岡山県出身の小説家。1988年『揚羽蝶が壊れる時』でデビューし、1991年に『妊娠カレンダー』で芥川賞を受賞した。2004年に発表した『博士の愛した数式』はベストセラーとなって読売文学賞、本屋大賞を受賞するとともに映画化された。2007年からは芥川賞選考委員を務めている。

命名に関する過去記事
https://gwcenter.icrr.u-tokyo.ac.jp/archives/672
https://gwcenter.icrr.u-tokyo.ac.jp/archives/1121