ごあいさつ

KAGRAプロジェクト代表 梶田 隆章

 大型低温重力波望遠鏡「KAGRA」は、アインシュタインが予言した「重力波」を観測し、それによって宇宙の研究を進めるプロジェクトです。

 東京大学宇宙線研究所が、高エネルギー加速器研究機構、自然科学研究機構国立天文台とともに、国内外の多数の大学・研究機関の協力を得て進めています。

 アインシュタインの一般相対性理論によると、質量をもった物体があると時空がゆがみ、物体が運動するとこのゆがみが宇宙空間を光速で伝わります。これが重力波です。

 重力波は非常に微弱で、これを検出するために世界の研究者が長年、試行錯誤を重ねてきました。そんな中、2015年9月14日、アメリカに設置された2台の重力波望遠鏡「LIGO」が人類史上初めて連星ブラックホールの合体に伴う重力波を観測しました。科学者の熱意が実り、重力波天文学が幕を開けたのです。

 これまでの天文学は、可視光、赤外線、紫外線、電波、X線、ガンマ線といった電磁波による観測が中心でした。重力波はこれらとはまったく異なる性質を持つため、従来の観察ではわからなかった宇宙の姿を明らかにしてくれると期待されています。宇宙に向けた新しい「窓」が開かれたといってもいいでしょう。

 ただし、重力波天文学はまだ始まったばかりです。今後、より正確に、数多くの重力波を観測するためには、世界に複数の高性能な重力波望遠鏡が必要です。国際的な連携や、望遠鏡のよりいっそうの高性能化、安定的運用も欠かせません。

 KAGRAと同規模の重力波望遠鏡は現在、アメリカとヨーロッパにあります。日本のKAGRAはこれらの望遠鏡とともに、国際的重力波観測ネットワークの重要な一翼を担うことが切望されています。

 KAGRAの観測を通し、みなさんと共に重力波が見せてくれる新たな宇宙の目撃者になりたいと思っています。