トンガ噴火(2022年1月15日)によるKAGRAの環境データ

 2022年1月15日13:14:45 (日本時間)、フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイの海底火山が噴火し、現地で甚大な被害をもたらしたことが世界中で注目されています。この噴火による影響は日本にもおよび、津波で船が転覆するなどの被害があった一方、KAGRAの環境モニターでも検出されました。
 KAGRAは日本の神岡地下に建設された重力波望遠鏡で、東京大学宇宙線研究所・国立天文台・高エネルギー加速器研究機構を中心に国内外の約400人の研究者が参加しています。同様の重力波望遠鏡としてアメリカのLIGOやイタリアのVirgoがありますが、これらが地上に建設されているのに対し、KAGRAは雑音低減のため地下施設に建設されています。重力波の信号は非常に微弱なので、これを観測するためにはありとあらゆる雑音を削減することが必要になります。その中でも周囲の地面振動や音といった環境起因の雑音をモニターして重力波信号と区別するために、KAGRAの地下実験施設や神岡地上では地震計や気圧計、空振計、磁力計など多種多様なセンサーが動いています。
 今回のトンガでの噴火によって発生した地球規模の地震波、衝撃波、および電磁波は8000km以上離れた神岡にも伝わり、地上だけでなくKAGRAの建設された地下トンネルでも明瞭に確認されました。このデータを用いることで、地上からの雑音を地下施設によってどの程度削減できるのか評価することができ、現在詳細な解析が進められています。また、このように様々な種類の信号を高精度で同時に観測できる施設は世界的にも珍しく、地球物理学や気象学、防災分野にも有用になると考えられます。
 なお、現在KAGRAは次期観測に向けた装置のアップグレードを行っているため、今回の噴火による重力波観測への影響はありませんでした。